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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

暗い秘密を隠そう隠そうとしたことは自分のためばかりでなく、一つは節子のためであると考えたのも、それは互に心を許さない以前に言えることであって、今となっては反ってそれを隠さないことが彼女のためにも真の進路を開き与えることだと考えるように成った。

「一切を皆の前に白状したら」

岸本は今まで聞いたことの無い声を自分の耳の底で聞きつけた。もし嘘でかためた自分の生活を根から覆し、暗いところにある自分の苦しい心を明るみへ持出して、好い事も悪い事も何もかも公衆の前に白状して、これが自分だ、捨吉だ、と言うことが出来たなら。

そこまで考え続けて行った時、岸本はこの心の声を打消したいように思った。

「嘘でかためたにしろ、何にしろ、あれほど義雄さんに強いるようにして頼んで置いて、今更そんなことが出来るものだろうか」

そう思うと彼は躊躇しない訳にいかなかった。自己の破壊にも等しい懺悔――彼は懺悔という言葉の意味が果してこういう場合に宛嵌まるかどうかとは思ったが――その結果が自分に及ぼす影響の恐ろしさを思うと、猶更躊躇しない訳にいかなかった。それの出来る時が、眼に見えない牢屋から本当に出られる時だろう、心から青空の見られるような気のする時だろう、待ち受けた夜明けの来る時だろう、そうは思っても、そこまで行くだけの精神の勇気を起そうとする