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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
「それがですよ、私でも附いていませんとお母さんが愚図々々言いまして――それに夜は寂しがりましてねえ。ですから私はお母さんの側へ行って泊ってあげることにしていますよ」
「輝にでも代って貰うが可いじゃないか」
「ええ、姉さんも来てくれますが、何しろ子供がありますからねえ。私の家の方にはいざという場合に、ほんとうに頼みに成るような人はありません……」
こう言って、節子は帯の間に手を差入れながら俯向いた。
「節ちゃん、どうだねえ、お前の『創作』はこういう時の役に立ってるかねえ」
「その力一つで私は持ってるようなものなんですよ……」
と節子は言って見せてホッと深い息をした。
やがて節子は自分の子供のことに就いて、例の女医から得た消息を岸本に話し始めた。その子供の話になると、彼女は他の一切のことを忘れているかのように見えた。彼女は父に内証で、いずれ折を見て自分の子供に逢おうと女医に約束したことや、幼年画報なぞを買ってそれとなく子供に贈るつもりで女医に託したことや、最早子供が字なぞを書くようになって仮の親達から末頼もしく思われているという女医の話なぞを岸本にして聞かせた。