轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
百六
しばらく節子は岸本の側で、自分の子供の噂に時を忘れていた。
「そう言えば、もう病院へ行かなきゃ成るまい。お母さんもお前を待ってるだろう」
と岸本の方で節子を促すように成った。彼の胸は節子の弱ってしまわないように、何とかして彼女を力づけたいと思うその心配で一ぱいになった。
「葡萄酒でも飲んでおいで」と言いながら、岸本は思いついたように部屋の隅にある茶戸棚の方へ立って行った。そこからボルドオの罎を取出した。彼は自分でも仕事の疲労を忘れるために買って置いたその好い香気のする興奮剤を激しく疲れている節子に飲ませた。
百六
病院の方の様子を気遣って、入院後六日ばかりになる嫂を見舞うために、岸本は愛宕下の下宿を出た。和泉橋まで電車で行って、それから病院を訪ねると、そこは岸本に取っても見覚えのある古い大きな建物の跡であった。未だ朝のうちのことで、施療を受けるための男や女の患者が入口の石の柱の側に群り集っていた。
嫂の病室は、幾棟かの建物に連なる長い病院風の廊下を突当ったところにあった。この病院へ通う博士の厚意で、小児科の病室の明いたところが嫂に貸し与えられてあった。