轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
十九
折角のお露が冷めてしまいます」
「私は先刻からそう思って拝見しているところなんですけれど、今日は先生のお顔色も好くない」ともう一人の女中が言い添えた。
「ほんとに岸本先生はお目にかかる度に違ってお見えなさる……紅い顔をしていらっしゃるかと思うと、どうかなすったんじゃないかと思うほど蒼い顔をしていらっしゃることがある……」
こうそこへ来て酒の興を添えている年の若い痩せぎすな女も言った。岸本はこの女がまだ赤い襟を掛けているようなほんの小娘の時分から贔屓にして、宴会なぞのある時にはよく呼んで働いて貰うことにしていた。この人も最早若草のように延びた。
「そこへ行くと、元園町の先生の方は何時見てもお変りなさらない。何時見てもニコニコしていらしって……」と年嵩な女中は言いかけたが、急に気を変えて、「まあ、殿方のことばかり申上げて相済みません」
そう言いながら女中は自分の膝の上に手を置いて御辞儀した。
「歌の一つも聞かせて下さい」
と岸本は言出した。すこしの酒が直ぐに顔へ発しる方の彼も、その日は毎時のように酔わなかった。
十九
生きたいと思う心を岸本に起させるものは、不思議にも俗謡を聞く時であった。