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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

「や。その話が出れば言うが」と義雄は弟の方を強く見て、「先ずどうも、子供を頼んで置いて外国へ出掛けて行くというのに、留守居のものにも逢わずに行ってしまうなんてことは――常識のあるものには出来ないことだサ。お前は何だったろう、嘉代が田舎から出て来る前に、神戸の方へ子供を置いて行ってしまったろう。『捨さんは未だ神戸に居るそうだ』ッて、嘉代なぞは出て来て見て呆れてしまった」

「そりゃもう姉さんの腹を立たれたのは、御尤もです」

「あの時のことを話せば、俺は未だ名古屋に居て、お前の不始末を知った。それから東京へ出て来て見た。嘉代が俺の袖を引いて、『どうも節ちゃんの様子がおかしいぞなし、あの娘に訊いても泣いてばかりいるが、どうもこれは只ではない、貴方がまた下手なことを言出したらどういうことに成るか知れんぞなし』と彼女が言うじゃないか。そこで俺が嘉代に、『解った、解った、貴様はここへ出るな、貴様は何事も言うな』と。その時はもうお前、節ちゃんはこれだろう――」

「いや、その話を伺うまでもなく、私も既に一度は死を決したものです」

「そりゃお前のことだから、それくらいのことは有ったろう――そりゃ、有ったろう――」