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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
それにも関らず、節子からの便りは続いた。一度絶えたと思った便りが復た続いた。彼女は長い三年の間自分に宛てて書くことを忘れなかったと書いた。漸く自分の帰国の日が来た。旅は自分の生活を変えたばかりでなく物の考え方をも変えさせた。自分は独身を固守するつもりも無かった。自分自身結婚する考えでもあり、節子にもまた適当な配偶者を択んで結婚することを勧めるつもりであった。その心で帰って来て見ると節子は一度ならず二度までも憂鬱に沈むような人であったと書いた。自分の眼に映る節子は到底今日の節子から思い比べることの出来ないほど衰え果てた人であったと書いた。自分が二度と彼女に近づいて見るように成ったのも、再婚の考えをひるがえすように成ったのも、自己の罪過の責を負おうと決意するように成ったのも、すべては皆彼女の破滅を傍観し得られなかったところから起きて来たことだと書いた。自分は蹉きもし、失望もし、迷いもした。しかし大体に於いて彼女を救おうとした自分の方針を過まらなかったつもりだと書いた。罪の深いところから出発した自分は、すくなくも自己に省みて疚しくないところまで彼女を導いたつもりだと書いた。