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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

「それですよ」と輝子はすこし肩を動るようにして、「祖母さんに黙って置いては悪かろうと思いまして、私から節ちゃんのことを話しました。どうして祖母さんは、悟でも開いたような顔をして、そんな話を聞いてもそれは平常の通りでしたよ……叔父さんの御手紙は私も拝見しましたがね、何にしても可哀そうなものは節ちゃんです。子供があると、なかなか忘れられないものだそうです」

こう言って輝子は笑った。彼女はもうこんな話をしたくないという風で、取返しのつかない叔父の懺悔から親戚同志の楽しい平和が破られた事を哀しむように見えた。こうした場合の輝子は言うだけのことを言っても、その後から直に彼女の涙もろい性質を見せた。

「どれ、御用はこれで済みました――君ちゃんも姉さんの側へいらっしゃい」

と輝子は次の部屋に遊んでいる君子を呼んで、大人同志の気まずい心持を子供の方へ避けた。

独りになってから岸本は節子に宛てて誰に見せても差支の無い手紙を送った。それには義雄兄の方へ書面を出して自分の立場を明かにしたこと、しばらく御無沙汰すること、祖母さんはじめ目上の人達へ奉仕の心を励んでくれということなぞを簡単に書いて送った。