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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
百十九
その翌々日、彼は節子からの返事を受取って見て、父の心はとけない、しかし自分は漸く少し楽な心持に成った、ほんとに勉強したいような気も起って来たから安心してくれという意味の言葉を見つけた。その返事の中には、「お父さんのところへ最初の御手紙の参りました時にも、私には見せませんで、自分で何かお書きになって、台湾の伯父さんの許へ出しました」ともしてあった。「布施さんから復た葉書が参りました。先日の御手紙は拝見した、その事につき御面談申上げたいことがあるから近日お伺いすると言って参りました――好い加減にして下されば好いのにね」ともしてあった。それを見て岸本は、義雄兄や輝子の間には未だ節子の縁談の続いていることを知った。
百十九
「噫、万事休す。われに断腸の思いあり。足下は自己を懺悔すと称えながら、相手方の生活を保証することによって不徳を遂行せんとするの形跡あるは言語道断なりと言うべし。吾娘はわれに於いて処分するの覚悟を有す。敢て足下の容喙を許さず。
ここに涙を振って足下を義絶す。
岸本義雄
岸本捨吉殿
猶、子供は罪なきものなれば、泉太、繁二子が時々の来訪を許す。
世の中の善きも悪しきも知れる身のなど踏み迷ふ人の正みち」