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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
急いで岸本は橋を渡った。すたすた家の方へ帰って行った。門松のある中に遊ぼうとするような娘子供は狭い町中で追羽子の音をさせて、楽しい一週の終らしい午後の四時頃の時を送っていた。丁度家には根岸の嫂が訪ねて来て岸本の帰りを待っていた。
「オオ、捨さんか」
と嫂は岸本の名を呼んで言った。この嫂は岸本が一番年長の兄の連合にあたって、節子から言えば学校時代に世話に成った伯母さんであった。「女の御年始という日でもありませんけれど、宅でも台湾の方ですし、代理がてら今日は一寸伺いました」とも言った。
節子は正月らしい着物に着更えて根岸の伯母を款待していた。何となく荒れて見える節子の顔の肌も、岸本だけにはそれが早や感じられた。彼はこの女らしく細いものに気のつく嫂から、三人も子供をもったことのある人の観察から、なるべく節子を避けさせたかった。
「節ちゃん、そんなとこに坐っていなくても可いから、お茶でも入れ替えて進げて下さい」
岸本は節子を庇護うように言った。長火鉢を間に置いて岸本と対い合った嫂の視線はまた、娘のさかりらしく成人した節子の方へよく向いた。この嫂は亡くなった岸本の母親やまだ青年時代の岸本と一緒に、夫の留守居をして暮した骨の折れた月日のことを忘れかねるという風で、何かにつけて若いものを教え誨すような口調で節子に話しかけ