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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

この特色が節子に伝わって、後から見た彼女の髪のかたちを特に岸本は好ましく思っていた。髪ばかりではない、女らしい耳でも、額つきでも、彼女は身内のものの誰よりも祖母さんに似ていた。博多の帯のことから話が出て、節子は女としての自分を岸本に言って見せたこともあった。彼女に言わせるとすらりとしたきゃしゃな体格にでも生れついて来た人でなければ、博多の帯なぞというものは似合わない。自分のようにこうゴツゴツした身体のものは、そういう柄でないと。不思議にも岸本はその骨張った、ゴツゴツした、背の高い節子から、悩ましいまでに柔かく女らしい線なぞの流れて来るのを見つけたものであった。

岸本の下宿のあるところから愛宕山へは近かった。そこへ子供を連れて行く折なぞは、泉太や繁が父と一緒に歩き廻ることを楽みにするばかりでなく、君子までも嬉しそうに随いて来た。見上げるように急な男坂の石段でも登って行くと、パノラマのような眺望がそこに展けている。新しい建築物で満たされた東京の中心地の市街から品川の海の方まで見えるその山の上で、岸本の心はよく谷中の空の方へ行った。

百二十六

この節はちっとも手紙を寄さないと御思いになりましょう、と節子が書いてよこした。