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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
「そうかも知れませんけれど、お父さんの心持も節ちゃんには解っていません」
「まあ、俺に言わせると、節ちゃんはお父さんに接近し過ぎたんだね。すくなくもお前よりは、節ちゃんの方がお父さんに接近して見た方だね。何だか節ちゃんもそんなことを言っていたよ。あの代筆をさせられるまでは、お父さんのことがそうよく解らなくって、反って好かッたって……」
「一体、節ちゃんは叔父さんによく似てますね」
「そうかなあ……俺に似てるかなあ」
「何事でもこう物をひねって考えるようなところが、それはよく叔父さんに似てますよ。そういう人達が二人揃ってしまったんですから、どうにも仕様がない」
この輝子の調子が岸本を笑わせた。その時、岸本は嘆息するようにして、
「お前達は節ちゃんが地獄の方へでも歩いて行くように思っているんだろう。ところが節ちゃんは、自分じゃ極楽の方へ歩いてるつもりでいる――そんなに見当が違って来ているんだもの」
「何ですか知りませんけれど、少し普通じゃ有りませんのねえ」
こう言って、輝子はまた輝子で嘆息した。
岸本はもうこんな話をしたくなかった。節子のことにさえ触れなければ、輝子は気の置けない話好きな親戚であり、折々子供を見に来てくれるような温情のある人であった。