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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

「けれども、女の伝道師などにも一種の型がございますね。ああいうのは私もあんまり好きではございません。外観から申しましても私の好きなのは、所謂上品から野暮を捨て、意気から下品を捨てたものでございますから」

こんなことを節子は手紙の中に書いてよこすこともあった。

何故宗教の話なぞが谷中の家で出るかというに、言うまでもなく節子の志すところがそこにあるからだ。身内のものの中から宗教の方面に人を送るというのも床しいことだと考えるようなものは、兄弟中で岸本の外には無かった。彼は節子の向いて行こうとする方面に賛成しているばかりでなく、寧ろその志を励ましたいくらいに思っていた。彼は節子からの依頼で、基督教主義のもとに出来た婦人の寄宿舎の様子を聞き合せたこともある。もし節子が宗教生活に身を投じようとならば、いくらも彼女の行く道はありそうに思えた。岸本に言わせると、彼女の宗教心は、言わば心の芽だ。そのかわり彼女には子供の時分から無理に注ぎ込まれたような先入主と成ったものが無い。その心の芽が罪過から萌して来たところに、岸本は望みを掛けていた。いずれにしても、彼女は今々直ぐに思うところへ出て行かれるような人ではなかった。