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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

百三十五

百三十五

翌朝、岸本は離座敷の廊下から庭へ降りて、独りで考えを纏めるために無花果の樹の下へ行った。そこから自分の部屋へ引返して来て民助と一緒に朝の茶を飲みながら話した。学校へ通う子供等を送り出した頃から、民助の話は復た「懺悔の一件」に繋がって起って来たが、でも前の晩に比べると余程打解けた調子で話すように成った。

「一体、どうしてああいうことを発表する気に成ったのかね」と民助は言って、やや声を低くして、「義雄の追求の仕方があまり苛しかったんだろうッて、俺は台湾の方に居てお秋(嫂の名)と二人でその噂をしていたよ――」

民助は思い当ることでもあるように言った。それを聞いた岸本の胸には、節子と二人で暗い暗い月日を送った時のことが浮んで来た。

「それもあります」と岸本は答えた。「しかし、そればかりで投出したという訳じゃありません。まあ、いろいろな心の経験が重なり重なってああいうところへ出て行ったんです。その証拠には私は義雄さんのために尽すことを決して嫌だとは思っていません。そりゃどうかということがあれば、今でも自分の力に出来るだけのことは為るつもりでいます。唯私は貴方がたと同じようにそれを為たいと思うんです。