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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
代々木、加賀町、元園町、その他の友人や日頃仕事の上で懇意にする人達も多くやって来てくれた。岸本はそれから人達の集っている方へも別れを告げに行った。
「この次は君の洋行する番だね」
と代々木の友人の前に立って話しかける人があった。
「そう皆出掛けなくても可いサ」
と代々木は笑って、快活な興奮した眼付で周囲に集って来る人達を眺めていた。
発車の時が近づいた。つと函館の老人は岸本の側へ寄った。
「私はここで失礼します。そんならまあ御機嫌よう」
改札口の柵の横手で、老人は岸本の方をよく見て言った。他の人と同じように入場券を手にしないところにこの老人の気質を示していた。
五六人の友人は岸本と一緒に列車の中へ入った。岸本が車窓から顔を出した時は、日頃親しい人達ばかりでなく、彼の著述の一冊も読んで見てくれるような知らない年若な人達までがそこに集まって来ていた。多くの人の中を分けて窓際へ岸本を捜しに来た美術学校のある教授もあった。
「仏蘭西の方へ御出掛だそうですね――私は御立の日もよく知りませんでした。今朝新聞を見て急いでやって来ました」
「ええ、君の御馴染の国へ行ってまいりますよ」