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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
彼は極印でも打たれたような額を客舎の硝子窓のところへ持って行って、人知れずそのことを自分に言って見た。
義雄兄からの便りには、「例の人」は産後の乳腫で手術を受けさせるから、その費用を送れとしてあった。それから一月半ばかりも待つうちに節子は精しいことを知らせてよこした。産は重くて骨が折れたが男の子が生れたと彼女の手紙の中に書いてあった。彼女はこまごまと書いてよこした。こんなにお産が重かったのは身体を粗末にしていた為であろう、自分はその事を人から言われたと書いてよこした。自分は僅かに一目しか生れたものの顔を見ることを許されなかったと書いてよこした。その田舎に住む子供の無い家の人から懇望されて、嬰児は直ぐに引取られて行ったと書いてよこした。例の親切な女医が来ての話に、「あなたのややさんは、それはよくあなたのお父さんに似ていますよ」と言って笑って話してくれたと書いてよこした。その田舎に住む坊さんが名づけ親になって親夫という名を命けてくれた――実はその名は坊さんが自分の子に命けるつもりで考えて置いたとかいうのを譲ってくれたのだと書いてよこした。生れたものの貰われて行った先で、どうかしてこの子のお母さんの苗字だけでも明して欲しい、それを明すことが出来なければ東京のどの辺か――せめて方角だけでも明して欲しいとのことで