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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

ていたというのも、恐らくその原因は彼女が長いこと弱々しかったところにあると思うと書いてよこした。彼女は非常に富有な家に生れて、世間というものを知らずにいる、随って他の忠告を容れようとはしない、何事も彼女が独りで出来ると思うならば、それが出来れば実に結構であると書いてよこした。なんでも滝という方は巴里遊学中には姪を御存じもなかったようである、姪からの手紙には非常に遠慮深い方だとしてあるが、彼女はその滝さんがいかなる種類の美術家であるやすらも報告することを忘れていると書いてよこした。もしまたあなたが忰宛に何か御知らせ下さるようなことが有れば、忰は相変らず図書館の方に通っているし、自分もあなたの御意見によって番町の御友人とやらに御相談するよう姪の許へ只今別に書面を送るつもりである、しかしその御友人の反対を恐れたら、あるいは姪は御相談にも参らないかも知れないと書いてよこした。彼女は半死の床にある母親を捨ててただただ彼女の娯楽のために日本の方へ去ったものである、自分等は電報で彼女の帰国を促したが、彼女が病める母を見舞うために巴里へ着いた時は既に万事が終った後であったと書いてよこした。