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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
彼女は母親の傍に腰掛けて仏蘭西の麺麭なぞを頬張りながら喰っていた。この家族の食事するさまを楽しげに眺めながら、同じ部屋に居て岡も簡単な昼食を始めていた。そこへ岸本はいくらかの用意したものを持って行った。
牧野、小竹の二人がこの珈琲店に落合ってから、岡は余計に元気づいた。三人の画家の中でも、小竹が一番年長で、その次が岡、牧野の年順らしかった。牧野も、小竹も、岸本に取っては国の方で名前を聞いていた人達であった。牧野には、岸本はもっと激烈な人を想像していた。逢って見た牧野は存外やさしい、綿密な、しかも気鋭な美術家であった。光沢のある頬の色は紅味勝ちな髪の毛と好く調和して、一層この人を若々しく見せた。小竹には、岸本はもっと親しみ難いような人を想像していた。旅で一緒に成った小竹は直ぐにも親しめそうな、人を毛嫌いするところの少い美術家で、誰にでも好かれそうな沈着な性質を見せていた。二人は巴里へ来てまだ月日も浅し、旅らしい洋服までが黒い煤にも汚れずにあった。
「牧野は矢張牧野だ。もっと弱ってでも来るかと思ったら、君の元気なのには感心した」と岡が言った。
「そりゃ岡なんかとは違うよ」