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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
彼はまた人と連立って、サン・ゼルマンの長い並木街をセエヌの河岸まで歩きに行って見た。ルウヴル宮殿の古い建物やチュレリイ公園の石垣が対岸に見える河の畔まで行くと、水の流れも何となく霞んで見え、岸に立つマロニエの並木も芽ぐんで来ていた。そういう日には殊に春待つ心が彼の胸に浮んだ。
二年近くかかって育てた新しい言葉も延びて行く時であった。彼は旅人らしく自分の周囲を見廻すと、来るべき時代のためにせっせと準備しているようなもののあるのに気がついた。彼の眼には、どう見てもそれは芽だ。間断なく怠りなく支度しているような芽だ。それは可成もう長いこと萌しに萌して来たものであるとも言える。けれども何人の骨髄にまでも浸み渡るような欧羅巴の寒い戦争が来て、一層その発芽力を刺激されたようにも見える。そうしたものが彼の周囲にあった。そしてその芽の一つとして、曾て一度は頽廃したものの再生でないものは無かった。
この観望は岸本が旅の心を一層深くさせた。彼の周囲には死んだジャン・ダアクすら、もう一度仏蘭西人の胸に活きかえりつつあった。彼は淫祠にも等しいような古いカソリックの寺院を多く見た眼でリモオジュのサン・テチエンヌ寺を見、あのサン・テチエンヌ寺を見た眼を移して巴里のフランソア・ザビエー寺などを見、更に眼を転じて「十字架の道」