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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

「幼少い時は弱い児だったからねえ。あの巾着頭が何よりの証拠サ。この児の姉さん達の方がずっと壮健そうだった。ところが姉さん達は死んでしまって、育つかしらんと思った泉ちゃんの方がこんなに成人って来た――分らないものだね」

「黙っといで。黙っといで」と泉太は父の言葉を遮るようにした。「節ちゃん、好いことがある。お巡査さんと兵隊さんと何方が強い?」

こういう子供の問は節子を弱らせるばかりでなく、夏まで一緒に居た輝子をもよく弱らせたものだ。

「何方も」と節子は姉が答えたと同じように子供に答えた。

「学校の先生と兵隊さんと何方が強い?」

「何方も」

と復た節子は答えて、そろそろ智識の明けかかって来たような子供の瞳に見入っていた。

岸本は思出したように、

「こうして経って見れば造作もないようなものだがね、三年の子守はなかなかえらかった。これまでにするのが容易じゃなかった。叔母さんの亡くなった時は、なにしろ一番年長の泉ちゃんが六歳にしか成らないんだからね。熱い夏の頃ではあり、汗疹のようなものが一人に出来ると、そいつが他の子供にまで伝染っちゃって――節ちゃんはあの時分のことをよく知らないだろうが、六歳を頭に四人の子供に泣出された時は、一寸手の着けようが無かったね。