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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
そこへ節子も挨拶に出て来た。岸本は唯黙って彼女の前にも御辞儀をした。
「これ、一郎も次郎も叔父さんに御辞儀しないか。そんなとこに立っていないで」
と嫂に言われて、兄の二人の子供と繁とは一緒に揃って岸本の前に並んだ。子供等は大人同志の挨拶の済むのを待っていたという顔付で。
「へえ、これが次郎ちゃんですか――」と岸本は初めて逢う頬の紅い子供を見た。
「あなたの御留守に、これが生れましたよ」と嫂は言い添えた。
三年も見ない間に繁の背の延びたことは岸本を驚かした。繁は皆の見ている前で父に逢うことをきまりの悪そうにして、少年らしく膝を掻合せていた。
「捨吉、まあお茶を一つお上がり」
と奥の部屋の方から呼ぶ義雄兄の前へ行って、岸本は初めて兄と差向いに成った。岸本が国を出る時、名古屋から一寸別離を告げに来たと言って、神戸の旅館まで訪ねてくれた人に比べると、この兄も何となく老けて見えた。
「もうお前も帰りそうなものだと言って、吾家へ訪ねて来た人なぞもあった。俺もね、子供をみんな連れて東京駅まで迎えに行ったが、お前は帰って来ないし……なんでも、大阪までお前の帰って来たことは分ってるが、それから先の行方が知れないなんて言う人もありサ。