轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
妻を失った後の岸本は、雛鳥のために餌を探す雄鶏であるばかりでなく、同時にまたあらゆる危害から幼いものを護ろうとして一寸した物音にも羽翅をひろげようとする母鶏の役目までも一身に引受けねばならなかった。子供の泣き声がすると、彼は殆ど本能的に自分の座を起った。部屋の外にある縁側に出て硝子戸を開けて見た。それから階下へも一寸見廻りに降りて行った。
「子供が喧嘩しやしないか」
と彼は節子や婆やに注意するように言った。
「あれは他の家の子供です」
節子は勝手口に近い小部屋の鼠不入の前に立っていて、それを答えた。何となく彼女は蒼ざめた顔付をしていた。
「どうかしたかね」と岸本は叔父らしい調子で尋ねた。
「なんですか気味の悪いことが有りました」
岸本は節子が学問した娘のようでも無いことを言出したので、噴飯そうとした。節子に言わせると、彼女が仏壇を片付けに行って、勝手の方へ物を持運ぶ途中で気がついて見ると、彼女の掌にはべっとり血が着いていた。それを流許で洗い落したところだ。こう叔父に話し聞かせた。
「そんな馬鹿な――」
「でも、婆やまでちゃんと見たんですもの」
「そんな事が有りようが無いじゃないか――仏壇を片付けていたら、手へ血が附着いたなんて」