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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

「そうかねえ。父さんが分らなかったかねえ」

「車の方をよく見なかったもの――日除が掛ってて、よく見えなかったもの――」

二人の子供は思いついたように顔を見合せて、父が旅の土産を取出しに行った。それを大事そうに父のところへ持って来た。

「泉ちゃんや繁ちゃんはお清書だの図画だのをよく父さんのところへ送ってよこしてくれたね。日本の字は筆で大きく書くだろう。外国ではお前、みんなペンだろう。泉ちゃんのお清書なぞを外国で見ると、字が大きくて、めずらしいくらいだったよ。そう、そう、よくお前達からお手紙なぞも貰ったっけね」

こうした父の話を聞くよりも、二人の子供は各自そこへ取出して来たものを父に見せようとした。その子供らしい悦びを父にも分けようとした。

「どれ、その帳面をお見せ。仏蘭西風の黒い表紙なぞが附いてて、好い帳面だナア。この帳面と色鉛筆は父さんが巴里で買って来たんだよ。お伽話の本もあるね。英吉利のお伽話だ。その方は父さんが倫敦で見つけて来た。二人とも大切にして納って置くんだぜ」

「なんだかこの本はむずかしくて読めやしない」と繁が言った。

「そりゃ英語だもの」と泉太は弟の方を見た。