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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

ずっと以前に一年ばかり彼が住んだことのある郊外――その頃はまだ極く達者であった妻の園子に、泉太や繁から言えば姉達にあたる三人の女の児を引連れて、山から移り住んだ頃の思出の多い郊外――その頃の樹木の多かった郊外が全く変った新開の土地となって彼の行先にあった。

「この辺の町もすっかり変ったね――」

こう岸本が言って見せるような場合にも、節子はそれを聞くだけに満足して、唯黙って叔父と一緒に歩きたいという風であった。久しぶりで「母さん」のお墓の方へ行く兄弟の子供、殊に兄の方の泉太に取っては、この子供が今歩いて行く道は自分の生れた郊外の方へ通う道に当っていた。

「泉ちゃん、大久保だよ」

岸本が後方の方から声を掛けると、泉太は一郎や繁と並んで歩いて行きながら、

「ああ、これが僕の生れた大久保だ」

とさも懐しそうに言った。節子は、丁度同じくらいな背に揃った三人の少年の後姿を眺め眺め、直ぐ後から静かに続いて行った。

以前に比べると寺の附近もずっと変っていた。「叔母さん」へあげるための花を買って行きたいという節子を花屋の店頭に残して置いて、岸本は一足先に寺の境内に入った。