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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

わたしの力は小そうございます。けれども心ばかりは決して人に劣らないつもりでございました。しかし全然考えを異にした一家族でございますもの、どんなに力を尽しましても、同じ軌道に立つことは出来ませんでした。一二箇月もかかって漸く築きたてたばかりの根拠も直ぐ破られてしまいますもの。子供をほんとうに一個の人として考えもし、取扱ってもやることが、自己を重んじさせることであろうというような考え方と、大人を全能の神のように思わせようとして催眠術をかけて置きたいという考え方と、両立しよう筈がございません。そしてその催眠術を廃するには、わたしはあまりに根深く所謂罪人でございましたのね。それにもう一つは、叔父さんからお預りした幼い人達なり、自分の弟なりで、真実の親子でなければ通じないようなところが無いでもございませんでした。これは自分のものだから、他のだから、などというそんな考えからでなく、どうすることも出来ないものだろうかとも思います。――今の叔父さんは随分お骨の折れることと思います。けれども、それは一歩ごとにお互いの心が近づいて行くことなのでございますから、子供の上にもしばらくの動揺はありましょうとも、きっと心からの感謝と信頼の情とをもって、向日葵の花のように光のなかにあゆむことが出来ると堅く信じます。