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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

「今日はお前が来ると言うんで、久しぶりで髭を剃って待っていた――髭でも延びてる時はそうは思わないが、これを剃ってサッパリすると、自分ながらそう思うね。こうして独りで置くのは惜しいものだと思うね」

こうした岸本の冗談が節子を笑わせた。

岸本はその心で節子を見た。何時の間にか彼女の生命も、あだかも香気を放つ果実のように熟して来ていた。彼はその見違えるほど生々とした表情を彼女の外貌のどの部分にも看て取ることが出来た。彼女の濃くなった髪の毛にも、彼女の冴え冴えとした眸にも。あの帰国当時の義雄兄の言草ではないが、「片輪の一人ぐらい」とまで周囲のものから見られるほど衰え果てた人を、ともかくもそこまで生かすことが出来たその人の知らない骨折を思うと、彼にはいくらか自分で慰めるに足るような気がした。

「それはそうと、吾儕の小さな歴史も始まってから何年に成るだろう」

「今年で六年越しじゃありませんか」

「そうか――もう六年越しかねえ」

岸本は節子と二人でこんな言葉をかわした。その時、彼は節子に訊いて見た。

「節ちゃん、俺は疾うからお前に訊いて見たいと思っていたんだが――お前の『創作』