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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
斯く言えばいたずらに親を軽視するものとの誤解も候わんなれども、決して決してさる意味にて申上るにはこれなく候。何事も唯々諾々としてその命に従い、あるいは又、内部に反感等を抱きながら表面には唯これに従うごときは、わが望むところにはこれなく候。生命ある真の服従こそわが常の願いに候。思想の懸隔に加えて、平生の寡言のため、これらを言い出ずる機会もなく今日に至りしものにこれあり候。
――自己の過ちを悔いもせず改めもせで、二度これを継続するがごときは禽獣の行為なりと仰せられ候。まことに刻々として移り行く内部の変化を顧みることもなく、唯外観によりてのみ判断する時は、あるいは世の痴婦にも劣るものとおぼさるべく候。すべてに徹底を願い、真実を慕うおのが心のかの過ちによりて奈何ばかりの苦痛を重ねしか。そは今更云々致すまじ。最後の苦汁の一滴まで呑み乾すべき当然の責ある身にて候えば。されど孤独によりて開かれたるわが心の眼は余りに多き世の中の虚偽を見、何の疑うところもなくその中に平然として生息する人々を見、耳には空虚なる響を聞きて、かかるものを厭うの念は更に芭蕉の心を楽しみ、西行の心を楽しむの心を深く致し候。