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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
それを御願いして、では買って進げるから一銭だけ自分で出して行くようになどと言われると、子供心に嬉しかったと書いてよこした。見ると、状箱のような容器に毛糸で編んだお金入が入れてある、そのお金入の中にほんの僅なお金を見た時は、自分はほんとに済まないことを言ったような悲しい気持になって、もう決してそんなことは言い出すまいと思ったと書いてよこした。それが自分の十か十一の歳の時であったと書いてよこした。考えて見ると自分は幼少い時から苦労性であったと書いてよこした。
今度なぞは、もし台湾へ行くように成ろうとも、最早心の曇るようなことはあるまいと思う、と彼女はまた書いてよこした。この間も父が一ちゃんを酷く叱った時、後で一ちゃんが青ざめた顔をしていたから、祖母さんが見かねて、いろいろなことを言ったと書いてよこした。その時父の言うには、節ちゃんなんかがそういう意見を出しているに違いないが、口で言って聞く位なら真に有難い、口で言っても聞かないものがあればこそ牢屋もあり警察もある、言うことを聞かない奴にも種々あるが、そういう奴はまたそういう奴で別に処分する、そんなことを言って暗に父から仄めかされたと書いてよこした。