轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
岸本はそろそろ引越の支度をしながら民助兄を待っていた。午後から兄が尋ねて来た頃は何時の間にか雨も通過ぎた後であった。前の年に一度、民助は台湾の方から上京して久しぶりで弟と顔を合せたことがあった。その兄も、岸本が仏蘭西の旅に上ろうとした当時神戸の旅館で偶然落合って別離の酒を酌みかわした頃の兄も、殆んど変りのないほどの人であった。今度逢って見ると、相変らず民助は身体のよく動く人で、台湾土産のバナナの菓子や羊羹を提げて来て子供等の悦ぶ顔を見ようとする人で、種々な事業上の話から台湾の方に嫂と二人住む家の庭の熱帯植物の特色などまで物静かに語り聞かせるような人ではあったが、しかし岸本は今まで合せたことの無いような顔を合せた。節子の話が出るまでは、岸本は沈着かなかった。
百三十三
岸本は半日民助兄と話し暮した。久しぶりで酒を取寄せ、夕飯を出す頃になっても、未だ節子の話は出なかった。子供等は台湾の伯父さんと一緒に食事することをめずらしがるばかりでなく、土産にと言って民助のくれた椰子の実の菓子鉢などを見るにつけても熱い地方のことを子供心に聞きたがるという風で、食後まで伯父さんの側を離れようとはしなかった。