Japanische Klassiker mit Furigana
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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
Lesen Sie 風流太平記 (ふうりゅうたいへいき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 244.473 Zeichen · 487 Bildschirme
八
徹之助はやさしく礼を述べてから、升屋のことを知っているか、と訊いた。
「はい、あまり詳しいことは存じません、まだ四五たびしかいったことがないんです、でも中のようすはあらまし知っています」
「石倉のある場所はどんなふうになっているか」
「ええと、――此処に母屋がこんなぐあいにありまして」
おちづが指で、畳に図取りをしようとするのを見て、つながいそいで硯箱と紙を持って来た。おちづは羞み笑いをして、
「あたしは字はだめなんです、読むことも書くこともできないんです」
「字は書かなくともいいの」
つなが微笑しながら云った。
「升屋の中のようすを、できるだけ間違えないように書いてみてちょうだい」
「筆なんて持つの生れて初めてだから」
おちづはこう云って、なるほど、いかにも妙な手つきで筆を持ち、墨をちょっと含ませて、こわごわ紙へ当てるのであった。
あまり太く線を引きすぎて、墨を滲ませたり、ぼとっと墨汁を落したり、幾たびか失敗したあとで、どうやら升屋の見取り図ができあがった。
「これが母屋、これが離れの数寄屋、これが石倉です」
徹之助は覗いて見ながら、
「こっちは道だな」
「はい、ずっと堀に沿っています、堀の向うは洲崎弁天です」