Japanische Klassiker mit Furigana
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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
Lesen Sie 風流太平記 (ふうりゅうたいへいき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 244.473 Zeichen · 487 Bildschirme
二
蔵人も片手に盃を持っていたが、掴んだかよの手は放さなかった。
「よく聞いてくれ、かよ、話というのはこれからなんだ」
「まあ放して下さいまし、そんなに乱暴になすっては痛うございますわ」
「やぼな声を出すな」
「ではこれを頂きますから」
かよは盃の酒を飲んだ。そうすれば相手に隙ができると思ったらしい、が、蔵人は少しも油断しなかった。
「おれはもうだめだと睨んだ」
と彼は声をひそめて云った。
「仮にだめでないとしても、この辺が退却の汐刻だと思う」
二
「なんの汐刻ですって」
「おちついて聞くんだ、いいか」
蔵人はかよの手をぐっとひき寄せた。
「おれは握るだけの金を握った、大阪に家も買ってある。一生遊んで、贅沢三昧に暮す準備がすっかり出来ているんだ」
「では、――ではあなたは」
かよは身もがきをした。
「事が危なくなったので、御自分だけ身をれて、安楽に暮そうと仰しゃるのですか」
「危なくなったからではない、初めからそのつもりでいたんだ」
「初めからって、――」
「そもそもの初めからさ、こんな大それた、夢みたような企みが成功する筈はない、そのうちには邪魔がはいるか、お屋形御自身が飽きるに違いない、そのときまでに掴めるだけのものを掴んでやろう、そう思って奔走していたんだ」