Japanische Klassiker mit Furigana
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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
Lesen Sie 風流太平記 (ふうりゅうたいへいき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 244.473 Zeichen · 487 Bildschirme
三
それでわれ知らず力を抜いたのであるが、同時に女が絶叫した。喉が裂けるかと思うほどの声で、――座敷いっぱいにぴんと響いた。
万三郎は女の口を押えようとした。
女はもういちど叫んだ。
万三郎は女を突き放し、障子をあけて、廊下から、庭へとびおりた。
暗くなった植込の、すぐ眼の前に、二坪ばかりの菊畑があり、うら枯れてはいるが、白くかたまって咲いている花の群が、そこだけ昏れ残ったように、ぼっと明るくにじんで見えた。
そこに、二人、立っていた。
護衛して来た三人の中の二人らしい、万三郎を見ると二人とも刀を抜いた。そうして、万三郎が立停ると、もう一人、廊下を走って来たのが、うしろから叫んだ。
「よせ、じたばたするな」
万三郎は振返った。
その男は座敷の灯を背にして立っていた。
顔は見えないが、例の中年の険相な男だろう、左手に三尺ちかい、殆んど無反の刀を持ち、今にも抜打ちを仕かけそうな、殺気のある身構えで立っていた。その身構えを見たとき、万三郎は危うく声をあげそうになった。
――こいつだ、この男だ。
築地の河岸の夜道、小雨のなかで、偽のつなを追っていたとき、うしろから来て躰当りをくれた男があった。