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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

と復た義雄の声で。

「次郎ちゃん、父さんのところへ行ってそう言って来て下さい。叔父さんはお話がありますから、どうぞ階下の方へいらしって下さいッて」

こう岸本に言われて、嫂や節子の側に遊び戯れていた次郎は二階へ通う梯子段を昇ったり降りたりした。

義雄は階下へ降りて来た。めったに長火鉢の前へ坐ったことも無いような義雄は部屋の隅にある行火の方へ行った。この義雄を話の仲間に加えたことは、余計にその階下の部屋を女と子供だけの世界のようにして見せた。その時岸本は温泉地の方へ兄を誘いに来たことを言出した。

「稀にはそれも可かろう。や。そいつは面白かろう。俺も一つ一緒に行ってやろう」

と義雄は行火の上に手を置いて、楽しそうに笑った。

「節ちゃん、好いねえ。男の人は何処へでも身軽に行けて」と嫂は母親らしい調子で節子に言って、やがて岸本の方を見て、「ほんとに、吾家では湯治にでも随いて行きたいような人ばかりですよ」

節子は黙って自分の掌を眺めながら皆の話に耳を傾けていた。

「何方にしても出掛けるのは明日の朝だぞ。俺はその方が都合がいい」と義雄が言った。

「姉さん、今夜は御厄介に成ってもよう御座んすか。