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しんせい

新生

島崎 藤村

「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页

青空文庫

それだけです」

「そこでだ、節ちゃんは台湾へ連れて行くことに決ったしと――」

と民助は言いかけながら、岸本の見ている前で座を起って、帯を締め直した。この兄は短い上京の日取の間に自分の用事も達さなければ成らずと言ったように坐り直して、やがて四方八方を円く治めて行きたいという口調で、更に言葉を継いで、

「俺もこうして出て来た以上は、このままにして置いて行く訳にはいかない。兄弟が仲違いをしているなんてことは不可。どうしても貴様と義雄とは元通りにして置いて行かないと、俺の役目が済まん」

「それは少し困ります」と岸本は驚いて、兄の言葉を遮った。「私の方からは勘当を受けようと言い出してあるくらいですし、当分はこのままにして置いて頂きたいと思います」

「それは不可――何処かで、貴様と義雄とを逢わせて、俺が仲直りをさせて置いて行く――このままなんてことは、どうしても不可――」

こう言って、民助が聞入れそうにもないので、岸本は義雄の方から来ている絶交状のことを思い出した。それを納って置いたところから取出して来た。

「義雄さんからこういうものが来ています」と岸本はその手紙を民助の前に置いた。