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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
買い得るか
一
」
瑠璃子も、可なり興奮しながら、本当のことを知りたがって、畳みかけて訊いた。
「彼の男は、お前の縁談があると云って来たのだ。」父の言葉は意外だった。
「妾の縁談!」瑠璃子は、そう云ったまゝ、二の句が次げなかった。彼女は化石したように、父の書斎の入口に立ち止まった。父は、瑠璃子の駭きに、深い意味があろうとは、夢にも知らずに、興奮に疲れた身体を、安楽椅子に投げるのであった。
買い得るか
一
父から、杉野子爵の来訪が、縁談の為であると、聞かされると、瑠璃子は電火にでも、打たれたように、ハッと駭いた。
やっぱり、自分の子供らしい想像は当ったのだ。杉野子爵は子のために、直接話を進めに来たのだ。その話の中に、子爵の不用意な言葉か、不遜の態度かが、潔癖な父を怒らせたに違ない。そう思うと、瑠璃子はあまりに潔癖過ぎる父が急に恨めしくなった。少しも妥協性のない、一徹な父が恨めしかった。自分の一生の運命を狂わすかも知れない、父の態度が、恨めしかった。瑠璃子は父に抗議するように云った。
「縁談のお話が、何うして妾を、侮辱することになりますの。またそんなお話なら、一応妾にも、話して下さってから、お断りになっても、遅くはないと思いますわ。