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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
六
」
勝彦は、又黙って肯いた。
「お父様を、何うしてあんなにしたのです。何うしてあんなにしたのです。」
瑠璃子に、そう問い詰められると、勝彦は顔を赤めながら、モジ/\していた。もし勝彦が、聡明な青年であったならば、簡単に率直に、しかも貴夫人を救った騎士のように勇ましく、
『貴女を救うために。』と答え得たのであるが。
六
瑠璃子から、何と訊かれても、勝彦は何とも返事はしないで、たゞニタリ/\と笑い続けている丈だった。
老人の喜太郎は、張り詰めていた勇気が、急に抜け出してしまったように云った。
「仕様のない若旦那だ。こんな晩に東京から、飛び出して来て、旦那をとっちめるなんて、理窟のねえ事をするのだから、始末に了えねえや。奥様! こんな人に介意っているよりか旦那の容体が大事だ!」
喜太郎は、勝彦を噛んで捨てるように非難しながら、座敷の真中に、生死も判らず横わり続けている勝平の方へ行った。
が、瑠璃子は喜太郎のように心から勝彦を、非難する気には、なれなかった。口では勝彦を咎めるようなことを云いながら、心の中では此の勇敢な救い主に、一味温かい感謝の心を持たずにはいられなかった。