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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
五
五
瑠璃子の嫣然たる微笑を浴びると、勝平は三鞭酒の酔が、だん/\廻って来たその巨きい顔の相好を、たわいもなく崩してしまいながら、
「あゝ、そうでがすか。貴女の心持はそうですか、それを知らんもんですから、心配したわい。」
彼は余りのうれしさに、生れ故郷の訛りを、スッカリ丸出しにしながら、身体に似合わない優しい声を出した。
「貴女が心の中から、私のところへ、欣んで来て下さる。こんな嬉しいことはない。貴女のためなら俺の財産をみんな投げ出しても惜しみはせん。あはゝゝゝゝ。」
荘田は、恥しそうに顔を俯している瑠璃子の、薄暗の中でも、くっきりと白い襟足を、貪るように見詰めながら、有頂天になって云った。
「貴女が来て下されば、俺も今迄の三倍も五倍もの精力で、働きますぞ。うんと金を儲けて、貴女の身体をダイヤモンドで埋めて上げますよ。あはゝゝゝゝゝ。」
荘田は、何うかして、瑠璃子の微笑と歓心とを贏ちえようと、懸命になって話しかけた。
十時を過ぎたお濠端の闇を、瑠璃子を乗せた自動車を先頭に、美奈子を乗せた自動車を中に、召使達の乗った自動車を最後に、三台の自動車は、瞬く裡に、日比谷から三宅坂へ、三宅坂から五番町へと殆ど三分もかゝらなかった。