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しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

六

それと同時に、眼前の情景に対する嫉妬の心は少しも減じなかった。

六

勝平が、縁側の欄干に、釘付けにされながら、二人の後姿が全く見えなくなった若い楓の林を、じっと見詰めている時に、その林の向うにある泉水の畔から、瑠璃子の華やかな笑いが手に取るように聞えて来た。

それは、雲雀の歌うように、自由な快活な笑いだった。結婚して以来、もう一月以上の日が経つ内、勝平に対しては決して笑ったことのないような自由な快活な笑い声であった。茲からは見えない泉水のほとりで、縦令馬鹿ではあるにしろ年齢だけは若い、身体丈は堂々と立派な勝彦が、瑠璃子と相並んで、打ち興じている有様が、勝平の眼に、マザ/\と映って来るのであった。

彼は苦々しげに、二人に向ってでも吐くように、唾を遥かな地上へ吐いてから、その太い眉に、深い決心の色を凝めながら、階下へ降りて行った。

勝平は、抑え切れない不快な心持に、悩まされつゝ、罪のない召使を、叱り飛ばしながら、漸く顔を洗ってしまうと、苦り切った顔をして、朝の食卓に就いた。いつも朝食を一緒にする筈の瑠璃子はまだ庭園から、帰って来なかった。

「奥さんは何うしたのだ。