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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
六
妾一身を賭して男性の暴虐と我儘とを懲してやりたいと思いますの。男性に弄ばれて、綿々の恨みを懐いている女性の生きた死骸のために復讐をしてやりたいと思いますの。本当に妾だって、生きた死骸のお仲間かも知れませんですもの。」
そう云いながら、夫人は一寸頭をうなだれた。緊張し切っていた夫人の顔に、悲しみの色が、サッと流れた。
六
物凄いと云ってよいか、死身と云ってよいか、兎に角、烈々たる夫人の態度は、信一郎の心を可なり振盪した。
これほどまで、深い根拠から根ざしている夫人の生活を、慣習的な道徳の立場から、非難しようとした自分の愚かさを、信一郎はしみじみと悟ることが出来た。夫人をして彼女の道を行かしめる外はない。縦令、その道が彼女を、どんな深淵に導こうとも、それは彼女に取って覚悟の前の事に違いない。多くの男性を飜弄した報いのために、縦令彼女自身を亡ぼすとも、それは、彼女としては、主義に殉ずることであり、男性に対する女性の反抗の犠牲となることなのだ。
「いや! 奥さん、僕は貴女のお心が、始めて解ったように思います。僕はそのお心に賛成することは出来ませんが、理解することは出来ます。