轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
五
お父様だって、昔であったら、そのまゝにはして置かないのだが。」
父の顔は益凄愴な色を帯びていた。
「あゝ、男でしたら、男に生れていましたら。残念でございます。」
そう云いながら、瑠璃子は卓の上に、泣き伏した。
何処かで、一時を打つ音がした、騒がしい都の夏の夜も、静寂に更け切って、遠くから響いて来る電車の音さえ、絶えてしまった。瑠璃子の泣き声が絶えると、深夜の静けさが、しん/\と迫って来た。
「それで、その告訴は何うなるのでございますか。まさか取上げにはなりませんでしょうね。」
瑠璃子は泣き顔を擡げながら、心配そうに訊いた。
涙に洗われた顔は、一種の光沢を帯びて、凄艶な美しさに輝いているのであった。
五
「さあ! 其処なのだ! 今日警視総監が、個人として俺に会見を求めたのは、その問題なのだ。総監が云うのには、この位なことで、貴方を社会的に葬ってしまうことは、何とも遺憾なことなので告訴を取り下げるように懇々云って見たが、頑として聴かない。そして唐沢氏本人がやって来て、手を突いて謝まるならば告訴を取り下げようと云うのだ。何うも先方では貴方に対して何か意趣を含んで居るらしい。