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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
二
彼は、自分の結婚に対して非難攻撃が高くなればなるほど、反抗的に公然に華美に豪奢に、式を挙げようと決心していた。
彼は、あらゆる手段で、朝野の名流を、その披露の式場に蒐めようとした。彼は、あらゆる縁故を辿って、貴族顕官の列席を、頼み廻った。
九月二十九日の夕であった。日比谷公園の樹の間に、薄紫のアーク燈が、ほのめき始めた頃から幾台も幾台もの自動車が、北から南から、西から東から、軽快な車台で夕暮の空気を切りながら、山下門の帝国ホテルを目指して集まって来た。最新輸入の新しい型の自動車と交っては、昔ゆかしい定紋の付いた箱馬車に、栗毛の駿足を並べて、優雅に上品に、軋せて来る堂上華族も見えた。遉に広いホテルの玄関先も、後から/\蒐まって来る馬車や自動車を、収め切れないではみ出された自動車や馬車は往来に沿うて一町ばかりも並んでいた。
祝宴が始まる前の控場の大広間には、余興の舞台が設けられていて、今しがた帝劇の嘉久子と浪子とが、二人道成寺を踊り始めたところだった。
二
新郎の勝平は、控室の入口に、新婦の瑠璃子と並び立って、次ぎ次ぎに到着する人々を迎えていた。
彼は嘘から出た真と云う言葉を心の裡で思い起していた。