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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
七
」
勝平は、いかにも鄭重に、恐縮したような口調で、ボツリ/\話し始めたのであった。丁度暴風雨の来る前に吹く微風のように、気味の悪い生あたゝかさを持った口調だった。
「うむ。志! 借金の証書を買い蒐めるのに、志があるのか。ハヽヽヽヽヽヽ。」父は、頭から嘲るように詰った。
「ございますとも。」相手は強い口調で、而も下手から、そう云い返した。
七
「初から申上げねば分りませんが、実は私は閣下の崇拝者です。閣下の清節を、平生から崇拝致している者であります。」
そう云って、勝平は叮嚀に言葉を切った。老狐が化そうと思う人間の前で、木の葉を頭から被っているような白々しさであった。人を馬鹿にしている癖に、態度丈はいやに、真剣に大真面目であるようだった。
「殊に近頃になって、所謂政界の名士達なるものと、お知己になるに従って、大抵の方には、殆ど愛想を尽してしまいました。お口丈は立派なことを云っていらしっても、一歩裏へ廻ると、我々町人風情よりも、抜目がありませんからな。口幅ったいことを、申す様でございますが、金で動かせない方と云ったら、数える丈しかありませんからね。」
父は黙々として、一言も発しなかった。