轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
六
その人が、屹度時計を返すべき本当の人を、教えて呉れるのに違いない。又、自分が時計を盗んだと云うような、不当な疑いを受けたとき、此人が屹度弁解して呉れるのに違いない。』
信一郎は、『瑠璃子』と云う三字を頼りにして、自分の物でない時計を、ポケット深く、蔵めようとした。
その時に、急に近よって来る人声がした。彼は、悪い事でもしていたように、ハッと驚いて振り返った。警察の提灯を囲んで、四五人の人が、足早に駈け付けて来るようだった。
六
駈け付けて来たのは、オド/\している運転手を先頭にして、年若い巡査と、医者らしい袴をつけた男と、警察の小使らしい老人との四人であった。
信一郎は、彼等を迎えるべく扉を開けて、路上へ降りた。
巡査は提灯を車内に差し入れるようにしながら、
「何うです。負傷者は?」と、訊いた。
「先刻、息を引き取ったばかりです。何分胸部をひどく、やられたものですから、助からなかったのです。」と、信一郎は答えた。
暫らくは、誰もが口を利かなかった。運転手が、ブル/\顫え出したのが、ほの暗い提灯の光の中でも、それと判った。
「兎も角、一応診て下さい。」と、巡査は医者らしい男に云った。