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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
四
彼は、ムラ/\と湧いて来る心を抑えながら、青年の云うことを、じっと聞き澄していた。
「成金だとか、何とかよく新聞などに、彼等の豪奢な生活を、謳歌しているようですが、金で贏うる彼等の生活は、何んなに単純で平凡でしょう。金が出来ると、女色を漁る、自動車を買う、邸を買う、家を新築する、分りもしない骨董を買う、それ切りですね。中に、よっぽど心掛のいゝ男が、寄附をする。物質上の生活などは、いくら金をかけても、直ぐ尽きるのだ。金で、自由になる芸妓などを、弄んでいて、よく飽きないものですね。」
青年は、成金全体に、何か烈しい恨みでもあるように、罵りつゞけた。
「飽きるって。そりゃどうだか、分りませんね。貴方のように、敏感な方なら、直ぐに飽きるでしょうが、彼等のように鈍い感じしか持っていない人達は、何時迄同じことをやっていても飽きないのじゃなくって!」女は、美しい然し冷めたい微笑を浮べながら云った。
「貴方は、悪口は僕より一枚上ですね。ハヽヽヽヽヽ。」
二人は相顧みて、会心の笑いを笑い合った。
黙って聞いていた勝平の顔は、憤怒のため紫色になった。
四
まだ年の若い元気な二人は、自分達の会話が、傍に居合す此邸の主人の勝平にどんな影響を与えているかと云う事は、夢にも気の付いていないように、無遠慮に自由に話し進んだ。