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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页
六
彼は、寝そべっていた獅子のように、猛然と腰掛から離れた。
六
勝平の激怒には、まだ気の付かない青年は、連の女を促して、丘を下ろうとしているのだった。
「もし、もし、暫らく。」勝平の太い声も、遉に顫えた。
青年は、何気ないように振返った。
「何か御用ですか。」落着いた、しかも気品のある声だった。それと同時に、連の女も振返った。その美しい眉に、一寸勝平の突然な態度を咎めるような色が動いた。
「いや、お呼び止めいたして済みません。一寸御挨拶がしたかったのです。」と、云って勝平は、息を切った。昂奮の為に、言葉が自由でなかった。二人の相手は、勝平の昂奮した様子を、不思議そうにジロ/\見ていた。
「先刻、皆様に御挨拶した筈ですが、貴君方は遅くいらしったと見えて、まだ御挨拶をしなかったようです。私が、此家の主人の荘田勝平です。」
そう云いながら、勝平はわざと丁寧に、頭を下げた。が、両方の手は、激怒のために、ブル/\と顫えていた。
遉に、青年の顔も、彼に寄り添うている少女の顔もサッと変った。が、二人とも少しも悪怯れたところはなかった。
「あゝそうですか。いや、今日はお招きに与って有難うございます。