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しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

二

声が、妙に上ずッて、少年か何かのように、赤くなってしまった。

深海色にぼかした模様の錦紗縮緬の着物に、黒と緑の飛燕模様の帯を締めた夫人は、そのスラリと高い身体を、くねらせるように、椅子に落着けた。

「本当に、盛んなお葬式でしたこと。でも淳さんのように、あんなに不意に、死んでは堪りませんわ。あんまり、突然で丸切り夢のようでございますもの。」

初対面の客に、ロク/\挨拶もしない中に、夫人は何のこだわりもないように、自由に喋べり続けた。信一郎は、夫人からスッカリ先手を打たれてしまって、暫らくは何にも云い出せなかった。彼は我にもあらず、十分受け答もなし得ないで、たゞモジ/\していた。夫人は、相手のそうした躊躇などは、眼中にないように、自由で快活だった。

「淳さんは、たしかまだ二十四でございましたよ。確か五黄でございましたよ。五黄の申でございましょうかしら。妾と同じに、よく新聞の九星を気にする方でございましたのよ。オホヽヽヽヽ。」

信一郎は、美しい蜘蛛の精の繰り出す糸にでも、懸ったように、話手の美しさに酔いながら、暫らくは茫然としていた。

二

夫人は、口でこそ青年の死を悼んでいるものゝ、その華やかな容子や、表情の何処にも、それらしい翳さえ見えなかった。