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しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

客間の女王

一

妾の心持を、聴いて下さるような男性のお友達が、欲しかったの、二人の異性の間には、真の友情は成り立たないなどと云うのは嘘でございますわね、異性の間の友情は、恋愛への階段だなどと云うのは、嘘でございますわね。本当に自覚している異性の間なら、立派な友情が何時までも続くと思いますの。貴方と妾との間で、先例を開いてもいゝと思いますわ。ほゝゝゝ。」

夫人は、真の友情を説きながらも、その美しい唇は、悩ましきまでに、信一郎の右の頬近く寄せられていた。信一郎は、うっとりとした心持で、阿片吸入者が、毒と知りながら、その恍惚たる感覚に、身体を委せるように、夫人の蜜のように甘い呼吸と、音楽のように美しい言葉とに全身を浸していた。

客間の女王

一

帝劇のボックスに、夫人と肩を並べて、過した数時間は、信一郎に取っては、夢とも現とも分ちがたいような恍惚たる時間だった。

夫人の身体全体から出る、馥郁たる女性の香が、彼の感覚を爛し、彼の魂を溶かしたと云ってもよかった。

彼は、其夜、半蔵門迄、夫人と同乗して、其処で新宿行の電車に乗るべく、彼女と別れたとき、自動車の窓から、夜目にもくっきりと白い顔を、のぞかしながら、