轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

「大阪毎日新聞」、「東京日々新聞」1920(大正9年)6月9日~12月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,296 字 · 578 页

青空文庫

三

殊に、光一があゝなってしまえば、お父様の子はお前丈なのだ。百万円はおろか、お父様の首が飛んでも、お前を手離しはしないぞ。ハヽヽヽ。」

父は、瑠璃子を慰めるように、快活に笑った。瑠璃子の心も、父に対する愛で、一杯になっていた。何時までも、父の傍にいて、父の理解者であり、慰安者であろうと思った。

「妾もそう思っていますの。何時までも、お父様のお傍にいたいと思っていますの。」

そう云って瑠璃子は初めてニッコリ笑った。嵐の過ぎ去った後の平和を思わせるような、寂しいけれども静かな美しい微笑だった。

三

二つの忌わしい事件が、渦を捲いて起った日から、瑠璃子の家は、暴風雨の吹き過ぎた後のような寂しさに、包まれてしまった。

家出した兄からは、ハガキ一つ来なかった。父は父でおくびにも兄の事は云わなかった。人を頼んで、兄の行方を探すとか、警察に捜索願を出すなどと云うことを、父は夢にも思っていないらしかった。自分を捨てた子の為には、指一つ動かすことも、父としての自尊心が許さないらしかった。

こうした父と兄との間に挟まって、たゞ一人、心を傷めるのは瑠璃子だった。彼女は、父に隠れて兄の行方をそれとなく探って見た。