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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
七十六
(The Ballad of Dead Ladies. ――Translation from Fran※(セディラ付きC小文字)ois Villon by Rossetti.)
東京下谷の池の端の下宿で、岸本が友達と一緒にこの詩を愛誦したのは二十年の昔だ。市川、菅、福富、足立、友達は皆若かった。あの敏感な市川が我と我身の青春に堪えないかのように、「されど去歳の雪やいづこに」と吟誦して聞かせた時の声はまだ岸本の耳の底にあった。
夜に入って、柔い雨が客舎の窓の外にあるプラタアヌの若葉へ来た。その雨の音のする静かさの中で、岸本はもう一度この事蹟を想像して見て、独り居る無聊を慰めようとした。
七十六
そんなに叔父さんは国の方の言葉を聞きたくているのか、叔父さんの旅の便りを新聞で読んでこの手紙を送る気に成ったと節子は岸本のところへ書いてよこした。煩く便りをするようであるが、国の方の言葉を聞くと思って読んでくれと書いてよこした。節子の手紙には泉太や繁の成人して行く様子を精しく知らせてよこしたが、何時でも単純な報告では満足しないようなところがあった。叔父さんに心配を掛けた自分の身も、今では漸く回復して、何事も知らない人が一寸見たぐらいでは分らないまでに成ったから安心してくれと書いてよこした。