轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
百三十
百三十
温暖い雨がポツポツやって来るように成った。来るか来るかと思ってこの雨を待侘びていた心地はなかった。五箇月も前から――旅の冬籠りの間――岸本は唯そればかりを待っていたようなものであった。リモオジュの旅以来、彼の周囲には何が有ったろう。仏蘭西国境の山地寄りの方では塹壕が深く積雪のために埋められたとか、戦線に立つものの霜焼を救うために毛布を募集するとか、そうした労苦を思いやる市民の心がその日まで続いて来た。彼の耳にする話は一つとして戦争の惨苦を語らないものは無かった。開戦以来、五六十万の仏蘭西人は既に死んでいるとの話もあった。この戦争が終る頃には満足な身体で巴里へ帰って来るものは少かろうとの話もあった。彼が町で行き遇う留守居の子供でも婦女でも老人でも、やがて来る春を待侘びていないものは無かった。寒苦、寒苦――この避け難い戦争の悩みの中で、世界の苦の中で、草木の再生がやがて自分等の再生であることを願っていないものは殆ど無いかのように見えた。
毎日のように岸本は部屋の壁に掛る仏蘭西の暦の前へ行った。日も余程長くなって来た。空も明るくなって来た。最早煖炉なしに暮すことも出来た。