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しんせい
新生
島崎 藤村
「東京朝日新聞」1918(大正7)年5月1日~10月5日、1919(大正8)年8月5日~10月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 334,815 字 · 663 页
やがて節子は白い百合なぞの自分で見立てたのを手に提げて来て、本堂に続いた庫裏の入口の側で皆と一緒になった。
「父さん、お線香は僕が持って行く」
気の早い繁は誰よりも先にそれを言出した。
園子の死――それから引続いて起って来た種々様々なことが、眼前に見るものと一緒になって、岸本の胸の中に混り合った。案内顔に先に立って墓地の方へ通って行こうとする年とった寺男、閼伽桶と樒の葉、子供等の手に振られる赤い紙に巻かれた線香の煙、何一つとして岸本の沈思を誘わないものは無かった。本堂の横手について一筋の細道が墓地の奥の方まで墓参りするものを導くように成っている。その古い墓や新しい墓の間の細道は、岸本が一人ずつ女の児を失う度に曾てよく往ったり来たりしたところであった。岸本は幾年振かで妻の墓の前に行って立って見た。「遠い旅からよく帰って来た」と言うか、「皆揃ってよく来てくれた」と言うか、それともまた何と言うか、そこに眠っている人の意も実に測りかねるような墓の前に。
「叔母さんが亡くなってから、もう七年にも成るかねえ」
と岸本は花を提げてそこへ随いて来た節子の方を顧みて言った。